永井均「存在と時間 哲学探究1」の要約と感想

このブログで私は、永井均という哲学者が書いた「存在と時間 哲学探究1」(文藝春秋)という本について、要約や感想を書いています。私は、哲学とか一度も勉強したことがなくて、哲学は全くのど素人なのですが、この本がすっごく大好きで、何回も繰り返し読みました。そして、ぜひたくさんの人に読んでもらいたいな、と思って、このブログを書きました。人生においてすっごく大事なことがぎっしり詰まった本だと思います。特に、悩みや苦しみを抱えている人が読むと、その悩みや苦しみが消えてしまうかもしれません。

マクタガートの問題提起――A系列とB系列

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マクタガートの問題提起――A系列とB系列

【要約】

1~2段落(186頁)

マクタガートの議論は、①時間はA系列とB系列の二つの系列からなる。②そのうちA系列のほうが時間の本質(それがなければ時間といえない要素)である。③しかしそのA系列には矛盾が内在している。④ゆえに時間は実在しない。という4ステップからなる。A系列とは未来、現在、過去という系列であり、B系列とは、より前、同時、より後、という系列である。真の問題は、このA系列、B系列という分類それ自体にある。

 

3~4段落(187頁)

A系列を、過去、現在、未来の順ではなく、その逆にしたのは、マクタガートがある時点(あるいはある出来事)は、必ず、まずは未来であり、次に現在になり、最後に過去になる、というようにこの系列を捉えているからである。

 

5~6段落(188頁)

時間において前であるか後であるかは、過去であるか未来であるかとは独立した規定であり、これが即ちB系列である。現実にどこが現在であるかとは関係なく成り立つ系列である。

 

7~8段落(189頁)

マクタガートはこの二つの系列の相違点(区別する基準)は二つあると言っている。一つは、B系列は二つの時点(あるいは出来事)の間の関係であるのに対し、A系列は一つの時点(あるいは出来事)がそれだけでもつ性質である、という点である。

 

9~10段落(189頁)

二つ目は、A系列を構成する事実(ある時点や出来事が未来であるか現在であるか過去であるか)は時間の経過に従って変化するのに対し、B系列を構成する事実(二つの時点や出来事のどちらがより前であるかより後であるか同時であるか)は、時間の経過によって変化することはない、という点である。

 

11段落(189頁)

つまり、A系列では時間全体が、①現在を中心として領域的に区分され、②その現在も動くが、B系列では、①領域分割がなく、②動性もなく、方向性のみがある。このように、B系列の本質は、時間軸上のどこをとってもそれより前とそれより後が全く同様に区別される、という金太郎飴的構造にあるから、しばしば強調されるB系列は二項関係であるという特徴づけは、基準から外すべきである。