永井均「存在と時間 哲学探究1」の要約と感想

このブログで私は、永井均という哲学者が書いた「存在と時間 哲学探究1」(文藝春秋)という本について、要約や感想を書いています。私は、哲学とか一度も勉強したことがなくて、哲学は全くのど素人なのですが、この本がすっごく大好きで、何回も繰り返し読みました。そして、ぜひたくさんの人に読んでもらいたいな、と思って、このブログを書きました。人生においてすっごく大事なことがぎっしり詰まった本だと思います。特に、悩みや苦しみを抱えている人が読むと、その悩みや苦しみが消えてしまうかもしれません。

2017-11-08から1日間の記事一覧

目次

第1部 世界はなぜのっぺりしていないのか 第1章 私は何を問いたいのか――無内包の現実性―― (無題)(10頁) 問題提起(15頁) この問題と似た別の問題の根底にもじつはこの問題が存在する(17頁) 実在的(リアル)な差異と現実的(アクチュアル)な差異(22…

付録 風間くんの「質問=批判」と『私・今・そして神』

目次はこちら 付録 風間くんの「質問=批判」と『私・今・そして神』 【要約】 1~4段落(329頁) 風間くんの批判=質問とは、「いま現実にはなぜか〈私〉である風間維彦が、かりに〈私〉でなくただの風間維彦という人であったとしても、〈私〉でないその風…

(無題)

目次はこちら 第18章 ただ不思議なことがありありと与えられているだけ (無題)【要約】1~8段落(322頁)これだけ論じてきたが、端的な今(現在)とは何なのかは何も明らかになっていない。私の今(現在)にかんする議論は、物理学とも神経生理学とも認知…

風間くん問題との対比

目次はこちら 風間くん問題との対比 【要約】 1段落(316頁) 可能主義的な敵の姿をはっきりさせて繋がり主義的な敵との異同をはっきりさせるために、「風間くん問題」に触れておく。 2段落(317頁) 彼(風間くん)の「質問=批判」を、私はこう理解した。…

〈今〉に適用すると

目次はこちら 〈今〉に適用すると 【要約】 1段落(313頁) 同じ問題を現在(今)に適用し、「これまでとつながっているのに今でない」場合と「これまでとつながっていないのに今ではある」場合を考える。 2段落(313頁) 後者は、今突然10年前に戻ろうと…

(無題)

目次はこちら 第17章 〈私〉と〈今〉の違いを語りの原理と繋がりの原理の対比から考える (無題) 【要約】 1段落(305頁) 「なぜ世界はいつもつながっているのか」という問いは「なぜいつもこいつが私なのか」という問いの一部であり、後者は謎である。 2…

時間が経過する――現在が動く

目次はこちら 時間が経過する――現在が動く 【要約】 1段落(298頁) もし現在(今)が無内包の現実性なのだとしたら、〈私〉が安倍晋三になったとしてもなったとは決して分からないのと同じように、それが動いても動いたとは分からないはずではないか。 2段…

現実の動く現在

目次はこちら 現実の動く現在 【要約】 1段落(292頁) 前章のアキレスとカメの対立図式は、それが端的な現在と動く現在の対比がそのまま現実の現在と可能な現在の対比に重ねられている点で、短絡的であったことになる。単なる可能な現在とは別の、現実の動…

端的な現実の現在も動く

目次はこちら 端的な現実の現在も動く 【要約】 1段落(287頁) 端的に現在であるという事実は、いかなる関係にも立たず、いかなる因果関係にも組み込まれえず、そもそもその事実が有効にはたらく出来事連鎖はありえない。それは何ともつながっていない、文…

(無題)

目次はこちら 第16章 現実の動く現在 (無題) 【要約】 1段落(286頁) 「で、その動く現在は今はどこにいるんだい?」という問いに現われている「現在(今)」の矛盾は、「私」の第一基準を適用する際に現われる「私」の矛盾と同じ種類の矛盾である。つま…

現実主義と可能主義

目次はこちら 現実主義と可能主義 【要約】 1段落(276頁) 坂下門外の変の例に話を戻す。このような議論は例にとった出来事連鎖が全体として過去だから言えることなのではないか、と問われた場合、その意味するところが、それらすべてが端的に過去である事…

小説や映画の世界

目次はこちら 小説や映画の世界 【要約】 1段落(275頁) ポイントは、「「端的な現在」の外部からの嵌入」である。たとえば、時系列に沿った小説について、突如としてある頁を開いてそこを読み始めれば、そこが現実のA変化の起こる場所となるようなもので…

現在は過去になる?

目次はこちら 現在は過去になる? 【要約】 1段落(273頁) 関連して、「現在が過去になる」とか「未来が現在になる」といった言い回しについても触れておきたい。これは不可解な表現ではないだろうか。 2段落(273頁) そもそも「現在になる」とか「過去に…

動く今はB系列である

目次はこちら 動く今はB系列である 【要約】 1段落(270頁) A系列を構成する二種の現在(今)のうち、動くほうは実はB系列である。 2段落(270頁) どんな出来事も、まずは未来の出来事であり、次に現在の出来事となり、最後に過去の出来事となる。これ…

(無題)

目次はこちら 第15章 B系列こそが時間の動性の表現である (無題) 【要約】 1段落(268頁) 「で、その動く現在は今はどこにいるんだい?」という問いに関連し、A系列をB系列から分かつ二つの基準(前項12段落)のうち、第一の基準は「今」について語っ…

現在(今)が動くとはどういうことか――現在と「針」――

目次はこちら 現在(今)が動くとはどういうことか――現在と「針」―― 【要約】 1段落(260頁) そうするとやはり、時間に固有の問題は現在が動くという不思議さに絞られることになる。これは、私と同様に安倍晋三もまた彼にとっては私であるという問題ではな…

出発点の「現在」をどう理解するか

目次はこちら 出発点の「現在」をどう理解するか 【要約】 1~2段落(256頁) いま提示したこの問題と、先ほど提示した「言い換え」の後の「矛盾」とを、同じ問題だと見る見方ももちろんあり、且つ、複数ありうる。その一つは、〈今〉を〈私〉に対応させ、「…

それでも時間は特別である

目次はこちら それでも時間は特別である 【要約】 1~2段落(250頁) それにもかかわらず、時間にはやはりまったく特別のところがあって、人称と時制の隔たりは大きい。時制について、まず「いつでもその時点は現在である=いつでもその針が指している時点が…

(無題)

目次はこちら 第14章 〈端的な現在vs.動く現在〉vs.〈現実の現在vs.可能な現在〉 (無題)【要約】1段落(249頁)前章で到達した「いつでもそこが現実の現在である」という「これまでとは逆の驚き」によれば、現在は2015年であるばかりか1908年でも2174年で…

動く現在とこの現在

目次はこちら 動く現在とこの現在 【要約】 1段落(247頁) もし現在が動くのなら、187頁のA系列の図(現在が2015年3月末頃を指している図)において、現在はどこなのか!?この図の「現在」の軌道のうちの一点だけが現実の現在であるはずだが、そのことは…

「+と-」には「正数と負数」の意味と「加法と減法」の意味がある

目次はこちら 「+と-」には「正数と負数」の意味と「加法と減法」の意味がある 【要約】 1段落(241頁) 「「動く現在」とその他者」と「私と私以外の人」との類比はなりたつが、その動きの内部における「「端的な現在」とその他者」と「私と私以外の人」…

中心的な問題へ

目次はこちら 中心的な問題へ 【要約】 1段落(237頁) 中心的な問題には二重性があって、一重目は人称や様相にも起こるような、この世界のあり方と言語のあり方との矛盾に由来する一般的な問題だが、二重目は時間の場合にしか起こらない独特の問題である。…

認識論的問題設定を退ける

目次はこちら 認識論的問題設定を退ける 【要約】 1~3段落(233頁) 同じ問題を認識論的に提示しなおすとこうなる。マクタガートにおいては、同じ一つの出来事が過去でも現在でも未来でもあることと、そのうちの一つでしかありえないことの矛盾として表れて…

(無題)

目次はこちら 第13章 マクタガート化されたデカルトをへて認識論的問題設定を退け、「正数と負数」と「加法と減法」の対比によって時間を考える (無題) 【要約】 1~5段落(228頁) マクタガートの示す「矛盾」には、ダメットの解釈と私(永井)の解釈があ…

マクタガートの言い換えを人称に適用する

目次はこちら マクタガートの言い換えを人称に適用する 【要約】 1段落(217頁) もし動性との絡みを考慮に入れなければ、マクタガートの提起した「矛盾」の問題は、人称や様相にも全く同様にあてはまる。 2~3段落(217頁) 私は、対面している相手や私を話…

言い換えが奪うもの

目次はこちら 言い換えが奪うもの 【要約】 1~2段落(210頁) これは動性の可能性への書き換えとも言える(「未来において過去である」は仮に未来という視点から見れば(今すでに!)過去である、とも取れる)。累進図で言えば、「過去になるだろう」は最上…

時間の「矛盾」

目次はこちら 時間の「矛盾」 【要約】 1~4段落(206頁) マクタガートの「それぞれの出来事に、過去・現在・未来という両立不可能な特性が述語づけられうるが、これは両立不可能性と不整合、且つ、変化を産み出すことと不整合」という議論は、一見するとず…

(無題)

目次はこちら 第12章 時間の矛盾を人称や様相と同型である側面において考察する (無題) 【要約】 1段落(206頁) 今回は、マクタガートの原典を引用することで議論を進める。

A系列とB系列の真の意味

目次はこちら A系列とB系列の真の意味 【要約】 1~3段落(201頁) 「この文を書くという出来事は、未来だったが現在となっており、もうすぐ過去になるだろう」という「むきだしのA変化」は、「この文を書くという出来事は、過去においては未来であるが現…

つぎに、B系列の本質を探る

目次はこちら つぎに、B系列の本質を探る 【要約】 1段落(197頁) B系列とは、時間からその現在(今)を取り去ったもののことである。過去と未来は現在を取り去れば自動的に取り去られる。マクタガートは現在を取り去るとは動性を取り去ることだと考えて…